エリート御曹司が花嫁にご指名です
「そうですか。わかりました」
「まだまだひよっこだという自覚が、宮本さんにはないようですね。桜宮専務の様子はいかがでしたか?」
「気にされてはいませんでした。私の指導不足です。申し訳ありませんでした」
 
 会議の終了後、宮本さんの名前は出ず、優成さんは執務室に戻って早速仕事を始めていた。

「いえいえ。もう彼女は秘書課に三年いるのですから、秘書としての態度がなっていませんでした。私のせいでもありますよ」

 南場秘書室長は、残念そうな顔で小さなため息を漏らした。

「専務室におりますので、なにかあったら呼んでください」
「わかりました。ご苦労さまです」

 私は頭を下げてから、秘書室を出てカフェスペースでコーヒーを淹れて、専務室へ戻った。

 専務室で仕事をするのは久しぶりだった。

 優成さんの電話中の滑らかな低音や、ときどき万年筆を指先でくるっと回す仕草は懐かしく感じられた。
 
 そしていつの間にか、優成さんの唇へ視線が集中して、我に返り、パソコンのモニター画面を見る。
 
 宮本さんが、優成さんと西野さんのキスシーンを目にしたと言ったせいだ。その事実を確かめるのは怖い。

「土曜日は、衣装の打ち合わせだったよな」
「えっ? あ、はい。そうです」
 
 いつの間にか電話は終わっていて、優成さんが私を見ていた。
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