エリート御曹司が花嫁にご指名です
 明日、桜宮専務と話をするのだと思い出し、気持ちが落ち着かなくなる。

「うん。金曜日の退勤前に退職願を出したの」
「そんな思いきったことを……で、辞めてどうするの? 桜宮専務にもう会えなくなるのよ?」
「お見合いをして、いい人だったら結婚するの」
「ええっ!? そんな綺麗さっぱり桜宮専務を忘れて、お見合い相手と結婚できるわけないじゃないっ。汐里の性格ならなおさらよ」

 私の片思いをずっと見守っていてくれた親友は、目を大きく見開いて驚きを隠せない。

「でも、このままでいたら、私は母親になれないわ」
「汐里の気持ちはわかるけど……仕事を辞めずに結婚相手を探すっていうのはどう?」

 私は小さく笑みを浮かべて、首を左右に振った。

「そんなことをしていたら吹っ切れないし……もういいの。誕生日のお祝いだって、金曜日に初めてランチに連れ出してくれたけれど、ただそれだけ。長年勤めた秘書を慰労するだけだったの」
「ただ食事をするだけ?」
「そう。いつもと変わらない食事で、私の胸がドキドキ高鳴っていただけ」

 オマール海老と真鯛の新鮮なオードブルがテーブルに置かれ、気を紛らわすために二枚の皿に取り分ける作業をする。


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