エリート御曹司が花嫁にご指名です
「すんなり受理されたの?」
「ううん。一身上の都合だけではわからないって言われたわ。明日話そうって」
 
 桜宮専務と対峙することを考えると、眉根に皺(しわ)が寄って、ため息がこぼれそうだ。

「美人で仕事ができる秘書を手放したくないと思うわ」
「それは言いすぎよ」

 茶化した珠理奈の物言いに、私はクスッと笑う。

「私の代わりはいるし、慣れれば大差なく仕事をこなせるわ」
「そうかしら……」
「大丈夫! 一身上の都合の理由はちゃんと考えたから。一ヵ月後には毎日乗馬をしているかもしれないわ」

 空元気な私に、珠理奈は心配そうな瞳を向け、「汐里が決めたことなら応援するわ。でも、後悔する前によく考えてね」と言ってくれた。


 家の駐車場に到着し、壮兄の車の隣に愛車を停め、外へ出る。頭痛は珠理奈と別れてからもっと痛くなっていた。

「ふう~」

 ズキズキする頭を動かさないようにして、いただいた乗馬服が入っている大きなショッパーバッグを肩からかけて、重い足を玄関へ運んだ。

「ただ今戻りました」

 リビングダイニングへ入ると、両親は食事中だった。壮兄はいない。

< 54 / 268 >

この作品をシェア

pagetop