エリート御曹司が花嫁にご指名です
「おかえりなさい。撮影はうまくいったの? 食事は?」

 若い頃、モデルをしていたお母さんは美人で、私は母親似だと言われている。

「うん。まあまあ。珠理奈と食べたわ。疲れたからもう休むね」
「汐里、顔色が悪いが?」

 内科医のお父さんには、いつもすぐに知られてしまう。

「少し頭痛がするだけ。薬を飲んで寝ます」
「ああ。そうしなさい」

 私はキッチンの中へ進み、冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを手にして、二階へ上がった。

 窓が開いていない部屋はムッとした暑さで、すぐさまエアコンのスイッチを押してルームウェアに着替えた。

 十二畳の洋室は少し涼しくなり、高校になってから買い替えたアンティークデスクの引き出しから頭痛薬を取り出した。

 艶のあるこげ茶のマホガニーのアンティークデスクは、今もお気に入りだ。

 薬を水で流し込み、ベッドに力なく横になった。いつもよりも騎乗している時間が長くて、足が痛い。

「身体がなまっているのね。前は一日中乗っていても痛くなかったのに」

 ひとりごちて目を閉じようとしたとき、ドアがノックされた。

「しおりん? 大丈夫か?」

 ドアが小さく開き、心配げな壮兄の声がした。

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