エリート御曹司が花嫁にご指名です
 時刻は八時十五分。桜宮専務がすでに仕事を始めていたのだ。

 スーツのジャケットは脱ぎ、ワイシャツの袖をまくって、いつもはきっちり絞められているネクタイが緩んでいる。

 喉仏から緩められたネイビーのネクタイまでのラインに、こんなときなのに色気を感じてしまう。

 朝からそういった姿は滅多に見ることがない。そんな姿に心臓がドクドク打ち鳴らす。

「おはようございます」

 一面の窓を背にしている桜宮専務に、出入口で声をかけ、頭を下げると、動揺を見せないよう自分のデスクへ移動する。

 桜宮専務と対峙する心構えができる前に、彼の姿がすでにあって狼狽していた。

「おはよう。早速だが話を聞こうか」

 桜宮専務は席を立ち、ソファに移動するとドカッと腰を下ろし、長い足を組む。

 ただそれだけなのに、自分がどのくらい魅力的なのかを桜宮専務は理解していない。いるだけで、女性の目を引きつけてしまう人である。

 私はデスクの上にバッグを無造作に置き、桜宮専務の前に座った。グレーのタイトスカートを撫でつけ、膝頭をピタッと合わせ、膝下から足先までを斜めにさせた。

 そして背筋をピンとさせ、桜宮専務の少し苛立ちを見せる顔へと視線を向ける。

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