エリート御曹司が花嫁にご指名です
 桜宮専務は身体の前で腕を組み、小さなため息とともに口を開く。

「さてと、退職したい理由を聞こう」

 私は膝の上で両手を握った手に力を入れ、自分を奮い立たせる。

「海外へ出たいんです。短期間ではなく、長期で。世界に目を向けて、自分を見つめ直したくて」
「長期といっても、どのくらいのスパンで? どこへ行き、どうやって自分を見つめ直すんだ?」

 次から次へとたたみかけられ、言葉がグッと詰まってしまう私だ。

「……まだ決まっていません」
「行き先は決まっていなくとも、自分をなぜ見つめ直したいんだ? 順風満帆な人生を送っているように思えるが?」

 桜宮専務には、私が順風満帆に過ごしているように見えるのね……。確かに普通の人よりも、家族や仕事関係では恵まれているかもしれない。

 私に足りないのは愛してくれる人。

 はあ……こんな話、口が裂けても言えない。愛情に飢えているだなんて……。

「汐里?」

 桜宮専務の鋭い瞳が、私を射抜くように見ている。

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