エリート御曹司が花嫁にご指名です
「……足りないものがあるんです。私は欲張りなので、それをどうしたら手に入れられるのか、探しに外へ出たいんです」
「仕事をしながらでは見つけられないのか? その漠然とした足りないものを」
「山を乗り越えてからじゃないと、見つけられそうもないんです」
 
 桜宮専務は目を細める。まるで私の心の中を見透かすように。
 
 目と目を合わせていられなくて、そっと左手の腕時計へ視線を落とした。

「十時の会議まで、あまり時間がありません。そろそろ……」

 私にだって、出勤後のいろいろな確認と、会議の準備もあるのだ。

「そんなものは待たせておけばいい。俺は今一番の大問題と向き合っているんだ」

 足を組み直し、威圧的な雰囲気を醸し出している。

 大問題……。

「それほどの問題だとは思えません。他に秘書はいますから、選出されたら私が辞めるまでに、仕事をできるようにします」
「できるように? それだけでは務まらないことくらい、わかっているだろう? 俺が求めるものを完璧にサポートしてもらわなければならないんだ。汐里のように」

 引き留める理由が、私に好意を抱いているからだったら、即座に退職願を撤回するだろう。

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