エリート御曹司が花嫁にご指名です
 でも、仕事上、完璧にこなせる秘書がいなくなるのが困るからだと、はっきりさせられて胸がツキンと痛みを覚えた。

 治まっていた頭痛が、この時間でぶり返してきている。
 
 気力がほぼなくなって、桜宮専務と話し合いができそうにない。
 
 ズキンズキンと頭痛もしてきて、無意識に額へ右手を置いた。

「本当に……お願いします」

 話を終わらせたくて、すっくと立ち上がった私は、深々と頭を下げた。顔を上げようとしたそのとき、目の前がグラッと揺れて足に力が入らなくなった。

「汐里!?」

 スーッと意識が暗闇の中へ引き込まれていく感覚に抵抗できず、桜宮専務の驚きの声を最後に、わからなくなった。



「そうだ。急に意識を失った。熱がある。ああ。あと五分で着く」
 
 桜宮専務のきびきびした低い声が聞こえてきて、私はハッとして目を開けた。
 
 シートが倒された助手席に乗せられていた。目を開けた先には、運転する桜宮専務の彫刻のような横顔が少しだけ見える。
 
 病院へ連れていかれる最中なのだろう。向かっているのは一条総合病院のはず。

「専務、すみません」

 シートの横に手をやって、元に戻そうとした。

< 61 / 268 >

この作品をシェア

pagetop