エリート御曹司が花嫁にご指名です
「気がついたか。そのまま横になっているんだ」
 ステアリングから手を離して、私のほうへ手が伸びる。でもその手は私に触れることなく戻っていく。

「突然、気を失ったりして申し訳ありませんでした。もう大丈夫ですから」
「いいから寝ていろ」

 断固とした声色の桜宮専務だ。ここで押し問答しても疲れるだけなので、素直に聞くしかない。

「壮二に連絡した」
「はい……」

 電話の相手は、やっぱり壮兄だったのね。

 そっと腕を顔のほうへ持ち上げて、腕時計で時間を確かめる。

 まだ九時を回ったところで安堵する。私を降ろしてからでも会議に間に合う。

 そして桜宮専務の運転する車は、病院の車寄せに停められた。ドアロックが解除された瞬時、外側から開けられた。

「しおりん!」

 心配そうな顔の白衣姿の壮兄が頭を車に入れて、私の額から頬、手首に触れる。

「壮兄は整形外科医でしょ。尊兄さんに」

 内科医は一番上の兄。

「俺が連れていくから」

 壮兄は、私の脇と膝の裏に腕を差し入れようとした。

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