エリート御曹司が花嫁にご指名です
「ちょ、ちょっと待って。医者なんだから、抱き上げないで。患者さんの目に触れるわ。歩けるから」
「気を失った割には元気だな」

 不機嫌そうな壮兄だけど、抱き上げて連れていかれるのは恥ずかしいし、人の目もある。

 壮兄を押しのけようとしたとき、彼の後ろに桜宮専務が立っているのが見えた。

「壮二、どけ。俺が連れていく」
「そ、それもダメです」

 壮兄は素直に立ち位置を桜宮専務に譲り、私はあっという間に抱き上げられていた。

「専務、下ろしてください」

 恥ずかしくて、さらに熱が上がったように思える。

「言っておくが、社で何人もの目にこの状態を晒されていたからな。恥ずかしければ俺の肩に顔をうずめているんだ」

 恥ずかしすぎて、言われた通りに桜宮専務の肩口に顔を伏せる私だった。

 彼のグリーン系の爽やかな香りを胸いっぱい吸ってしまって、胸がドクンドクンと忙しい。
 
 この高鳴りが届かないように祈るばかりだ。


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