エリート御曹司が花嫁にご指名です
 ベッドがたくさん並んでいる処置室に通され、静かに下ろされる。

「ありがとうございます。専務、会議の時間が」

 桜宮専務はスーツのジャケットの袖を少しずらして、高級車が買えると言われる腕時計へ視線を落とす。

「しっかり休養するように」
「はい……ありがとうございました」

 もう一度お礼を口にした私に、桜宮専務は小さく頷いた。

「俺が今朝しおりんに会っていたら、出社させなかったのに」

 壮兄は私を睨んでから、処置室を出ていく桜宮専務を見送って、戻ってきた。


 尊兄さんに診察され、軽い熱中症から脱水症状を起こしていたとの見解だった。

 処置室で点滴を受けた後、自宅のベッドに寝かされた。
 
 夜にまた点滴とのことで、ベッドサイドには点滴スタンドが用意されている。
 
 桜宮専務に迷惑をかけてしまったわ……。
 
 気を失うなんて初めてのことで、私自身、驚いている。
 
 少し楽になったものの、眠気に襲われ、今朝の桜宮専務との話し合いがうまくいったのか、考えているうちに眠りに引き込まれていった。


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