エリート御曹司が花嫁にご指名です
 上司の指示通り、翌火曜日は休暇を取らせてもらい、水曜日に私は出社した。
 
 月曜日と同じ時間に専務室へ到着すると、まだ桜宮専務の姿はなかった。
 
 私のデスクには書類が置かれ、数えきれないくらいのメモがベタベタと貼られている。
 
 それらはすべて桜宮専務の達筆な文字。その一枚を手に取ったとき、専務室のドアが開いて、上司が姿を見せた。
 
 メモを再びペタッと戻し、桜宮専務のほうへ歩を進ませる。

「おはようございます。このたびは大変ご迷惑をおかけしました」

 両手を身体の前で組んで、深々と直角に近いお辞儀をした。

「大丈夫なのか?」
「はい。問題ありません。すぐにコーヒーをお持ちして、メモを処理します」
「ああ。頼む。ご覧の通り、汐里がいないと仕事がうまく回らない」

 暗に辞めるなと言っているのは察することができるが、私は小さく微笑んで専務室を退出した。

 カフェスペースへ行くと、秘書課の後輩たちがコーヒーを淹れながら話をしていた。

「いいな~。汐里さんを抱き上げて颯爽と歩く専務の姿を拝めたなんて」
「でしょ。めちゃくちゃカッコよかったわ。汐里さんが羨ましかったもの」

 私の存在に気づかないで、ふたりはどうやら月曜日の話をしているようだ。

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