エリート御曹司が花嫁にご指名です
「本当に専務と汐里さん、付き合っているんじゃない? お似合いよね」
「美男美女でね」

 悪口を言われているわけではないのに、居心地が悪くてここを離れようとした。

「あなたたち、美男美女の話はいいから、早くコーヒーを持っていきなさい」

 三和子さんだった。私の横に立ち、ふたりを真面目な顔でたしなめる。

 話に花を咲かせていた彼女たちは私に気づき、ビクッと身体を硬直させるような姿勢になった。

 そして、慌てて「おはようございます! お先に失礼します」と言って、それぞれがコーヒーを持ってカフェスペースを出ていった。

「まったく、昨日もあなたたちの話で盛り上がっていたのよ」

 三和子さんはやれやれと、苦笑いを浮かべた。

 今日の三和子さんの装いはクリーム色のパンツスーツで、デキる女の代名詞のようなカッコよさがある人だ。

 私は桜宮専務と再び対峙しなくてはならないこともあって、黒のタイトスカートと黒のブラウスで、これで黒のジャケットを着たら葬儀にも出られる。

「意識を取り戻したのは車の中で……やっぱり専務室から抱き上げられていたんですね?」
「みたいよ。私も見たかったわ」

 ふふっと笑う三和子さんだ。


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