エリート御曹司が花嫁にご指名です
「壮兄、もう余計なことを言わないで。桜宮専務、送ってくださりありがとうございました。お気をつけてお帰りください」

 私はもう一度頭を下げて、壮兄の腕をガシッと掴んで門扉のほうへ足を運んだ。

「しおりん! 見送らないのか?」

 壮兄が、いつもと違う様子の私に驚きながら、仕方なく足を運んでいる歩を進めている。

 私は振り返って桜宮専務を見ることができなかった。


「しおりん、会社を辞めてまで見合いをして結婚したいのか?」

 玄関に入るなり、壮兄は私に詰め寄る。

「そうよ。私は結婚して子供が欲しいの」

 今日は特別にピンヒールを履いており、それを脱ごうとする。

 桜宮専務へ余計なことを話してしまった壮兄に、苛立ちを覚えながら、なかなか脱げないピンヒールへ手を伸ばし、乱暴に脱いで玄関横の階段へ進む。

「お前は優しいし、子供好きだからそう考えるのもわかるけど、早まるのはよくないよ」

 壮兄は後ろからついてきて、静かな声で諭してくる。

「早まっているわけじゃないわ。まごまごしていたら高齢出産の域になってしまうかもしれないの。お見合い相手すらいなくなるわ」
「はあ~。焦る必要はないのに。しおりんは美人なんだから」

 二階の自室の取っ手を握った私は、壮兄の無神経さにひとこと言いたくて、クルリと向き直った。

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