エリート御曹司が花嫁にご指名です
 十分後、海が見える埠頭に車は停められた。

 その間、桜宮専務は考え事をしているのか、ずっと黙ったままだった。
 
 そんな彼は近寄りがたくて、私も固まったまま、前を走る車を見ていたのだが、頭の中はめまぐるしく考え事をしていた。
 
 どこへ行くのだろうか、なにを話せばいいのだろうかと、ずっと考えていたけれど、理由を隠せばさらに嘘をつくことになってしまいそうだ。

 そろそろ平静を装うのが難しくなってきたところに、車が停められてホッとした。

 狭い空間の車内が重苦しくなって、エンジンが止められると、すぐさま私は外へ出た。

 外は夏の夕暮れで、ムッとしているが、気持ちが少し落ち着いてくる。

 桜宮専務も続いて運転席を離れ、こちらへ近づき、目の前に立った。スーツのジャケットは脱いでいて、ワイシャツの袖は捲られている。

 捲られた袖から露出している筋肉質の腕に、ドキッと心臓が音をたてた。

 そんな私の思いなど気づかない桜宮専務は、瞳を合わせてくる。

「汐里、昨晩の壮二の話は本当なのか?」
「本当です。海外へ行って自分を見つめ直すというのは嘘です。私の望みは結婚して子供が欲しいんです」

 私は面と向かって、はっきり告げた。

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