エリート御曹司が花嫁にご指名です
 日曜日、私はワードローブの中を覗き込み、お見合いへ着ていく服を探していた。

 ウォークインクローゼットの中には、かっちりしたビジネス用のスーツが目立つ。

 水色のスーツを手にしてみて、桜宮専務を思い出してしまった。彼が珍しく褒めてくれたスーツだった。

 私は頭をプルプルと左右に振って、水色のスーツを戻す。

「色は明るいけれど、別のがいいわね」

 隣にかけてあった白のワンピースを手にした。ウエストを絞らないサラッとした生地で、袖はノースリーブ。膝下までのスカート丈は品がよく見える。

 ウォークインクローゼットから出て、壁時計を見ると、十三時を回っていた。

 約束の時間は十五時で、六本木駅にある高級ホテルのラウンジだ。

「早く支度しないと」

 服をベッドの上にポンと無造作に置いた。それからドレッサーの前に腰を下ろして、手早くメイクを施した。

 昨夕、桜宮専務に言いたいことをはっきり言えたのだから、スッキリしたかと思いきや、まだ胸は痛み、苦しさを覚えている。

 時間が経てば、桜宮専務は忘れられる。会わなくなれば……。

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