俺と、甘いキスを。
好きな女を泣かすなんて。
花の肩に置いた手に、力が入る。
言ってしまおうか。
だが、これを言えば、全てを花に話さなければならない。まだはっきりしていないことを、花に言うことはまだできない。
「花。結婚のことは、お前に話しておかなきゃいけないと思っている。ちゃんと話すと約束する。少しだけ時間をくれないか」
「……」
ゆっくりと顔を上げた彼女の頬には、涙の流れた跡が残っている。その筋を、俺は親指で優しく拭う。
「その間に俺たちの謎解きをしよう。俺はまだ花に聞きたいことがある」
と、話をすると、花は椅子から立ち上がった。
「右京さん。私たちの間に、謎解きは必要ないのかもしれません。そんなことをしても右京さんが既婚者であることに変わりはないし、私がお見合いすることも変わらないんです……」
花は俺から顔を逸らすと、鼻声でポツポツと言い残してダイニングから出ていった。
花の言っていることは間違っていない。
全て、自分のエゴだ。
自分の焦りと甘さから起こした悔いる行動も、それでも諦められず足掻く今の自分も。