俺と、甘いキスを。
午後、部屋でスマホを使って調べ物をしていると、電話の着信を知らせる小さな呼出音が鳴った。
相手は原田京華だ。
電話の内容は仕事か、それとも。
通話をタップして「もしもし」と言えば、スマホの向こうから「原田です」と彼女の声が聞こえた。「体調はどうですか」などと、ありきたりな見舞いの言葉を聞いて、
「それで、右京さん」
と、声色を変えた。
『右京さん、聞きました。私でよければ協力するわ。その代わり、私のお願いも聞いて欲しいけれど』
俺はこの言葉に、眉間に力を入れた。
花は昼前から出かけていた。昼食も花の両親と一緒に、俺は花の用意していった朝食と同じ雑炊を食べた。彼女の作る食事のおかげで、俺の体調はすこぶる良くなっている。
しかし、あれから花は俺を避けている。矛盾した行動や言い回しに、彼女が怒るのは当然だ。
そして俺がここで花を諦め、これまでどおりの生活に戻るのも容易い。
──まあ、そんな気はないけどな。
今、自分の中で一番ネックとなるのは、六年間続けたマリエとの夫婦関係を終わらせることができるのか、ということだ。そのためには、どうしても確認しておかなければならないことがあるが、まだその確認ができずにいる。
「はぁ……」
柄にもなく、重いため息が零れていく。