俺と、甘いキスを。
「もし、俺がマリエと離婚することになったら、お前は柴本課長ではなく俺を選んでくれるか」
「え?」と、小さく声を漏らす彼女は俺を見つめる。
「まあ、例えば、ということだが……」
と付け足すと、花は口元を緩めた。
「奥様は凄く右京さんのこと好きみたいですよね。右京さんだって奥様のことを嫌っているように見えませんでしたし……離婚なんて有り得ないと思います。右京さん、変なこと言っちゃダメですよ」
と当然のような口振りで、部屋を出ようとした。
「じゃあ、俺が本当に離婚を考えていたら、お前はどうする?」
その言葉に、花の水色のもこもこしたルームソックスを履いた足がが再び止まる。
キョトンとした顔が俺を見る。
「まさか」
「いや」
そう返事をして、俺は胃に負担をかけないように、布団に肘をついて起き上がる。
「そのために、今いろいろ調べてもらっている。俺はこのとおり動けないから、人に頼んでいるんだが……その結果次第で、マリエと別れようと決めている」
「マリエさんはデザイナーとして立派に仕事をしている女性ですよ。それに右京さんを大切にしているように見えます。彼女を調べても悪いことなんて出てこないと思います」
と、花は頭からマリエの潔白を主張する。
「研究所で見かけた時は行動力のある明るい人だと思いましたが」と、付け加える。先日のマリエの振る舞いを見て、俺の妻だからという意味で極力控えめな感想を並べたに違いない。