俺と、甘いキスを。
椿マリエは、実際はワガママだ。
彼女は自分の思いどおりにならないと不機嫌になる一方で、楽しいことが大好きで気の合う仲間を集めてはパーティーばかりする。そして自分の好きなデザインの仕事は絶対妥協しない、納得するまで仕事をする。拘りが強い。自分を磨くことにも手を抜かず、週二回のジムとエステは欠かさない。
自分のステータスとライフスタイルを百パーセント駆使する女、それが椿マリエだ。
こうなったのは、彼女を放漫に育てた彼女の両親と、結婚してからも仕事と私生活を自由にさせていた俺の責任なのだろう。そのおかけで彼女の幼い頃からの派手な人付き合いに輪をかけて、成長してからは国内外に仲のいい友人やセフレらしき男たちがたくさんいる。
彼らの存在に気づいたのは、結婚してから自宅に世界中から届いた百枚近くのクリスマスカードを見たときだった。その中には夫として妻を問い詰めないといけないような色気のあるメッセージもいくつもあった。
しかし俺にとっては嘘でも真でも、ただ呆れるばかりだったことを覚えている。
まだマリエは立場上、俺の妻だからここまでは言わない。その代わり違う言葉で花に伝えた。
「そのうちわかることだが、マリエは俺たち兄弟と幼馴染だ。実家同士が近所で、マリエの両親は仕事ばかりで彼女の面倒は祖父母に任せきりだった。だからイタリアへ旅立つ前まで、暇さえあればよく家に遊びに来ていた。俺の実家は必ず誰かいたし、両親に相手にされないマリエの寂しさもわかっていたからな。同情もあっただろうが、俺の家族はマリエを粗雑に扱うことはなかった」