俺と、甘いキスを。
霞む視界に、横からスッと腕が伸びてきたかと思えば、花の兄の腕をぐいっと掴み捻りあげた。
俺の体が彼から離れたことで、畳に叩きつけられるように倒れる。やっと呼吸ができるようになって、俺は咳き込みながら目上げた。
そこには花の兄の腕を持ち上げる、鋭い視線を放つ俺の兄、右京誠司の姿があった。
「暁、お前は病人の右京さんに何をしてるんだっ」
花の父が驚いて声を上げ、花の兄は兄貴の腕から離れると縁側に座りんで星空を見上げていた。
兄貴は俺の看病のお礼と見舞いに川畑家を訪れ、花の両親が部屋まで案内してくれたそうだが、俺たち三人に驚いて止めに入ってくれたのだ。
花の母が蹲る花を介抱しながら起き上がらせ、部屋から連れ出した。
花の父は病人であり客人の俺に襲いかかった暁さんに激怒していたが、俺はそれより力任せに妹である花を傷つけたことに怒りを感じていた。
兄貴が「首、少しアザになってる」と、俺の首を見つめていたが、その細めた瞳にはまだ微かに白光りしていた。
「本当に、息子が申し訳ありませんでした」
花の両親に謝られた時には、俺も普通に呼吸ができていたし、兄貴からもいつもの温厚そうな笑みが見えた。
「僕も思わずお兄さんに手荒な真似をしてしまい、すみませんでした。それに弟の看病をして頂いて、大変お世話になっています。蒼士の体は週末には落ち着くと聞いています。今は一人の自宅に帰すより、もう少し面倒を見ていただけると僕も助かります」
兄貴が頭を下げると、花の両親は「しっかり治してほしい」と、俺を快く受け入れてくれた。
「……」
そして今。
この部屋で座卓を囲んで、俺は兄貴と花の兄と膝を突き合わせていた。