俺と、甘いキスを。

花が俺の隣に座ったことが気に入らなかったのか、暁さんはムスッと不機嫌な顔をした。
俺は花が来たことで、先ずはこの兄妹の確執を解くべきだと思った。

「暁さん。僕と花のことは後程お話します。暁さんがここに来る前に、僕は花から暁さんのことを聞きました。僕の思うところ、二人の間で何か誤解があるんじゃないかと思っています。何故、彼女が暁さんに冷たい態度をするようになったのか。いつからそうなったのか、心当たりはありませんか」
暁さんすぐに「そんなことあるわけっ」と言い返そうとして、花に視線を移して見つめる。一方、ガン見されている花は、迷惑そうに顔を歪めた。

「ちょっと、ジロジロ見ないでよ。私がお兄ちゃんに対して考え方を変えたのは、中学生の頃よ」
花はそう言ってヒントを出した。すると暁さんは「中学生の頃……」と、目をキョロキョロさせて記憶を掘り起こし始めたようだった。

俺は花から既にこの件のことを聞いていた。答えに辿り着きそうにない彼を横目に、花は俺にゆっくりと頷いた。
「暁さん。中学生の花は、あの時見ていたそうです。この家の前であなたが友人たちと会話をし、何について話していたのかを」
「俺が友人たちと会話?あの頃の会話といったら、学校のことや流行りのテレビ番組のことくらいで、花の怒るようなことはなかったと思うが」
と、暁さんは花の様子をチラチラと見ながら答える。

花は怒りを通り越したのか、呆れたように「はぁ」とため息を漏らした。
「そうよね。覚えていないのは、お兄ちゃんにとって私はそれくらいの存在としか考えてなかったのよ。みんなの前で妹の私のことを、それも私が見ているのにあんなことを言っていたらショックを受けるに決まってるでしょ。私、まだ中学生だったのよ?」
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