俺と、甘いキスを。

暁さんは手を後頭部にやると、ガリガリと荒く掻く。
「全てを覚えているわけじゃないが、同級生のアイツらと妹のことで話したことがあった。スマホで自分たちの妹の姿を見せ合って自慢してた」


──見てよ。これ、俺の妹。
──うおっ、可愛いじゃん。俺の妹も見てよ。
──いきなり女らしくなって、ヤバい。
──川畑も妹いるだろ?見せてよ。


暁さんは当時の話の内容を、ポツポツと話す。
「俺も花の写真を見せろと言われたけど、写真なんて持ってないし、あっても見せる気がなかったから「持ってない」と言って断ったんだよ」


──妹なんて、写したことねぇよ。


「多分、その時にアレを言ったんだ。アイツらから写真撮って見せろと言われたかもしれない。でもあれは後でいろいろ言われることが面倒でそう言っただけであって、誓って絶対本心じゃないっ!」

いつの間にか、彼のその目は花を射抜くくらい見つめ、焦りからか声も大きくなっていた。
花も俺の隣にピッタリとくっついて座っていたが、視線は暁さんへしっかりと向いていた。

暁さんの視界には、花しか映っていないようだ。
「花が、自分の妹が可愛くないわけないだろっ。アイツらの前で「花が可愛い」なんて言えば、花がアイツらの目に晒されて注目されてしまう。それはスマホで見たあの妹たちよりも、花の方が断然可愛いからだよっ!俺はただ、花のことが他の男たちに知られて近寄られることが嫌だっただけだっ」

半ばヤケになって白状させられた感じで、暁さんは吐き捨てるように言葉を並べた。

「……お兄ちゃん」
俺にしか聞こえないくらいの、花の小さな呟きが聞こえた。

彼は警察官という職業柄、威厳ある外見ではあるが、妹のことになると砂糖並みに甘くなるようだ。

そんな暁さんの表情が次第に悲しみの色が浮かぶ。
「それなのに、花は社会人になって俺の知らないところで男を作り、ボロボロになって捨てられた。だから花と結婚する男は、俺の納得する男でなきゃ許さないと決めた。それまでは、俺が花を守る。この前だってお前が泣いて帰ってきたと聞いて、俺がどれだけ……っ」


「この前、花が泣いて帰ってきた」というのは、きっと俺が泣かせたことだ。
それはさておき、苦しそうに顔を歪める暁さんを、俺は彼の本音だと受け取って疑うことはしなかった。
< 133 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop