俺と、甘いキスを。
花の体の力が抜けていく感じが、こっちにまで伝わってくる。彼女は何も言わないが、漂う空気で自分の兄に敵意はなく、自分の中で納得した理由だったと感じることができた。
花の中にある、謎の一つが解決したのだ。
花がクスッと笑った途端、この部屋の空気がふわりと軽くなった気がした。
「私はそんな理由のために、二十年近くもお兄ちゃんを避けていたなんて……バカな兄妹よね、私たちは」
と、苦笑する花。
暁さんは目尻を下げた弱々しい顔で「花」と呼ぶ。花は俺から少し離れて、暁さんと向き合った。
「お兄ちゃんは、私を嫌っていない。それでいいのよね?」
「あっ、当たり前だっ!お前はずっと俺の可愛い妹だっ」
恥ずかしながらも声を張り上げて宣言する暁さんに、花は「調子に乗り過ぎ」と笑った。
もし俺の謎も全て解決したら、その時も花はこんなふうに笑ってくれるのだろうか。
一抹の不安を感じて、何気なく兄貴へ視線を移す。兄貴も俺を見ていたようで、すぐに目が合うと微笑んで頷いた。
「花が心を許したといっても、既婚者のあなたが花を幸せにできるとは思えない。あなたが俺を納得させるくらいの立場になった時、改めて花が幸せになれるのか見極めさせて欲しい」
それが花の兄、暁さんからの俺と花の関係についての答えだった。
予想通り、といったところか。
ただ、「お前には渡せない」と言われなかっただけ良かったかもしれない。