俺と、甘いキスを。
気を遣ってか、ひと騒ぎが収まったところで花は暁さんと居間へ移動した。
俺たち以外の人の気配がなくなったところで、兄貴が口を開いた。
「まったく、お前って奴は人騒がせな弟だよ」
「兄貴にはちゃんと感謝してるよ。今も本当に助かったと思っている」
これは本心だ。
「本当にそう思って欲しいよ」
兄貴は苦笑いを浮かべて、ジャケットの内ポケットから封筒を取り出した。
ここからが兄貴がここへ来た、本当の本題だ。
「まあ、こっちも相当人騒がせな人物だと思ったがな。というか、これはちょっとした社内問題だ。人事的な面では、お前に感謝しないとな」
と言う兄貴の横で、俺は封筒の中を取り出した。
記載されている文章と、添付された何枚かの写真。
「……はあ??」
俺はそれらに絶句した。
兄貴も呆れ顔でそれらを見下ろす。
「その報告はお前に頼まれた翌日のみの行動に関するものだ。スゴいだろ?」
と他にも何か言っていたが、それを余所に、俺の頭の中は次の行動を描き始めていた。
お互いの用が済んだところで、花がタイミングよく和室に現れた。
「失礼します。兄がアパートに帰ると言うので……」
柔らかい表情で、花は俺を見てほんのりと頬を染めた。
兄貴が「じゃあ、俺も」とコートを手に立ち上がる。
「蒼士、また連絡するよ。体、大事にしろよ。花ちゃん、蒼士のこと、よろしくね」
和室を出る兄貴が花に声をかけると、彼女はピッと緊張した顔になる。
「は、はい。右京専務も今日はありがとうございました。手土産のお菓子も美味しくいただきました。ごちそうさまでした」
と、頭を深く下げる。
兄貴が「ははっ」と、笑う。
「花ちゃん、会社の外なんだから、そんなに固くならないで。俺も花ちゃんのこと、妹みたいに可愛いと思っているから」
と言って、花の頭をポンッと軽く撫でた。
兄貴は玄関で靴を履いている暁さんと一緒に家を出ていった。