俺と、甘いキスを。
花と二人になった和室。
彼女は俺に顔を緩ませて笑った。
「右京さん、本当にありがとうございました。まさか本当に兄との誤解が解けると思っていなかったので、何だか不思議な気分なんです。ほっとしたというか、気が抜けたというか……」
俺の花は、どこまでも意地っ張りのようだ。
「そこは素直に「嬉しい」と言えばいいんじゃないか」
その小さな肩を抱き寄せた。
火曜日。
昼前からパラパラと降ってきた雨が、今では本降りになった。
花の両親と一緒に昼食をいただく。肉じゃがと白菜のかき玉汁だ。味付けはさすが親子といったところだろうか、花の味付けは母親譲りだと思った。
「肉じゃが、美味しいです」
「まあ、よかったわ。いつもは花が作るんだけど、たまには私も作らないとね」
と、花の母は機嫌よく笑う。
「花がお嫁に行けば、また私が料理することになるから、少しでも感を取り戻しておかないと。花は本当に料理上手で、私も甘えていたのよ。この前も唐揚げを沢山作ってね、食べきれないから会社に持っていったくらいで……」
そうだ。ここで世話になり始めた時、花が言っていた。
『母が七十近くなり、台所に立つことが大変になってきたから、自分がご飯を作ろうと決めたの』
そんな親思いの花でも、結婚すれば当然この家を出ていくのだ。
「……」
花の料理をあれこれと話す彼女の母の話に耳を傾けながら、俺は考えた。