俺と、甘いキスを。
居間の縁側から見える空はどんよりと暗い雲が広がり、雨が止む気配はない。そして、すっかり雨水を吸い込んで何ヶ所も浅い水溜まりができた庭を眺めた。
花の父があたたかいお茶をすすめてきたので、居間で二人、寛ぐことにした。
話のネタに、少し聞いてみた。
「花さんが教えてくれました。以前、あの庭には大きな納屋があったそうですね」
すると彼は「そう、そう」と話に乗ってきた。
「まだワシの親父たちが生きていた時に建てた納屋があって、田畑で使う農具や米や野菜を置いていた。花が小さい頃まで使っていて、丁度いい遊び場だったよ」
と、その頃を懐かしむように庭の方を眺めた。
「この庭はいずれ暁が嫁をもらう時に、ここに新居を建てようと手付かずにしていたんだが、仕事のこともあり暁は家を出てしまった。それなら花が結婚する時にと思ったが、嫁の実家に家を建てるのも夫の立場としては嫌がるだろうしな」
なるほど。
「おじさん。立ち入ったことを聞きますが」
少し興味が湧いてきた。
「今回お見合いする柴本さんとは限らず、もし、花さんと結婚する相手がここに家を建てたいとお願いしてきたら、どうしますか?」