俺と、甘いキスを。
心ゆくまで花の唐揚げを堪能した俺は、案の定、胃薬の世話になった。
「だから無理して食べちゃダメって言ったじゃないですかっ。消化不良になったらどうするんですか」
本気で怒っていないだろうが、薬を水で流し込んだ俺に渋い顔をした。
胃に手を当てながら「残しちゃもったいないだろ」と言ったものの、実際は花の唐揚げが美味くて体調のことも忘れてつい食べすぎてしまったのだ。
だからこれは「気をつけよう」と思わず、「美味いんだから仕方がない」と、花にとって甘い答えを出してしまう。
食後、まだ雨戸を閉める前の縁側で、俺は真っ暗な夜空を見上げていた。雨はいつの間にか止んでいたが、空はまだ雲に覆われている。
「右京さん、夜はまだ寒いですから。ここにいたら風邪をひきますよ」
と、花が洗濯物を持って現れた。
「うん。ちょっと考え事をしていた」
「考え事、ですか」
花が首を傾げて俺を見る。
俺は花に向けた視線を、また夜空へ戻す。
「花。あの雨の日、お前は弁当の袋を持っていたのに、俺に「弁当は持ってきていない」と答えた」
その言葉に、花はピクリと肩を震わす。
やはり、ビンゴか。
「あの日、弁当の中には唐揚げが入っていた」
「あっ、えっ……どうして」
言い当てられたのか、彼女は口をパクパクさせて動揺している。
「俺、唐揚げが好きだから楽しみだったのに」
と言って、両手に洗濯物を持つ花の頬をするりと撫でた。
花の母の情報が役に立ったようだ。
花は観念したように、目を左右にキョロキョロして呟いた。