俺と、甘いキスを。

「私に、右京さんを刻んでください」

唇が食べられそうな、深く激しいキス。
舌を絡め取られた時、甘い味がした。いつものキスが子供っぽく感じるくらい、濃艷で、そして大人で。
体の全てを、彼の唇と指先が優しく撫でていく。丁寧で、恥ずかしいくらい官能的で。
「……ぁっ」
頭がクラクラして声を抑えようとしても、口を塞ぐ手を彼が指を絡めて握る。

「声を聞かせて。隠さないで、全部見せて」

「んっ……やっ」
「花の声、色っぽい」
火照り始めた体。胸の膨らみに唇を寄せながら、視線だけ私に向ける右京蒼士のほうが、よっぽどエロいじゃないか。

されるがままに気がつけば下着も脱がされ、頭の先から足のつま先まで彼の唇が素肌に落とされた。小さなリップ音を立てながら、唇が触れた部分が更に熱を帯びていく。

閉じていた足が、ゆっくりと開かれる。
「おねがい。ライトを消して」
「ダメ。可愛いから、よく見せて」
右京蒼士の脳が痺れるような色気のある声に、惑わされてもいいと指を絡めた彼の手を握った。

時間をかけて、まるで十年の時間を埋めて塗り替えていくように。
私を初めて抱かれる、処女のように。時間をかけて、ゆっくりと溶かしていく。

「花、力を抜いて。俺だけを見て、俺だけを感じて」
「ん……あっ」
強い刺激に、耐えられず目を閉じてしまう。
「花、俺を見て。名前を呼んで」

なんとか薄く目を開けると、真上に私を見つめる右京蒼士と目が合った。額に汗を滲ませ、眉をひそめて苦しそうに息を吐く。黒い前髪から滴り落ちた汗が、私の頬を濡らした。
「うきょう……」
「蒼士。名前で、呼んで」
彼の掠れた声で、ドクンッと心臓が高鳴った。

右京蒼士の口角が上がる。
「その顔で、俺を呼んで」

全身が熱くなって、下腹部が疼いた。
──私、右京蒼士を欲しがっている。

「……蒼士、あぁっ!」

全身を駆け巡る痛みに、大きな声で叫ぶ。
私は彼の首に両手を回して、思いっきり抱き寄せていた。
体いっぱいに、彼を感じて。
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