俺と、甘いキスを。
「右京専務。今回の川畑さんのお見合いは、全て原田さんが仕組んだってことですか?」
峰岸真里奈の戸惑いながらの発言に、みんなが注目する。テーブルに同席した右京誠司は、コーヒーカップを形の良い唇につける。
「俺もここへ乗り込んだ時点で、全てを把握していたわけじゃなかった。ただ柴本貴臣に女の影があることは知っていたけど、柴本の母親から原田の名前が出るとは思っていなかった。原田信久は知る人ぞ知る、不動産で財を成す資産家で、法律ギリギリの手を使う金貸しでもある。だから柴本に聞いてみたんだよ。重要なことが聞けてよかった」
彼の話が終わるタイミングで、その手にあるスマホの小さな着信音が鳴る。
「ああ、わかった」
と、返事だけで終わる会話。
右京誠司が私たちに言った。
「みなさん、お疲れのところ大変申し訳ありませんが、この場を少しお貸しいただけませんか。どうか、お願いします」
そう言って立ち上がり、再び深く頭を下げる。
兄が「一体何があるんだ」と聞く。彼は綺麗な顔で苦笑した。
「それがなんというか……俺にも詳しいことがわからないんだ。今までの切り離された出来事を一度繋げてみよう、ということで花ちゃんを含む関係者全員にここに集まってもらうことにしたんだ。お見合いの場から一変してこんなことになってしまったことに、川畑家のみなさんには本当にお詫びのしようがないのですが……」
兄はそんな右京誠司を見て、両親と顔を合わせた。父は「花が関係しているなら話を聞こう」と頷いた。兄も同意のようで、
「花は危険な目にあったりしないんだろうな?」
と、彼に疑いの目を向けた。
右京誠司は真面目な表情で兄に言う。
「花ちゃんのお見合いは意図的なものだったことがわかり最悪な事態を免れたけど、根はもっと深いところにあると思う。俺は花ちゃんを守る側に立つよ」