俺と、甘いキスを。

「俺のここでの目的は、今の妻であるマリエとの「事実に基づいた離婚」です。そのためにはお互い明らかになっていない部分をみなさんの立会いの下、一つずつ解いていこうと思っています」
すると、原田京華が腕組みをしたまま大きなため息を吐く。
「右京さん、離婚の手続きなら二人でできるでしょ?マリエさんの条件を飲んだということなら、私たちの話し合いは離婚成立後でも遅くないわ」
と、高級そうな光沢のあるバッグを手に立ち上がろうとした。

「俺は、原田さんから五千万を受け取る気はない」

右京蒼士の言葉に、原田京華は「え?」と動きが止まる。そして、その目が椿マリエに向けられた。椿マリエは首を横に振っている。
右京蒼士の切れ長の目は、美しく着飾った原田京華を見据えた。その上、相当彼女に怒っているようで、口調も荒くなっていく。

「ちょっと名の知れた資産家が、アンタもアンタのじいさんもやることが汚ぇんだよ。どうせマリエに「離婚するなら安っぽい慰謝料よりショーのスポンサーとして五千万を支払わせるようにしろ」とか焚き付けたんだろ?同じ研究員なら、俺の年収も予想できるだろう。五千万なんて大金を持ってないことを見越して、俺に連絡してきた。そうだよな?」

『私でよければ協力するわ。その代わり私の願いも聞いて欲しいけれど』

「そしてアンタは俺に言った。「私が離婚の条件の五千万を援助します。その代わり私を愛して結婚して欲しい」と。どうやら原田さんデータによると、俺の愛というのは五千万で売り買いできるらしい」
「……」
怒りを込めた冷ややかな目が、無言の原田京華から椿マリエに向けられる。彼女は顔面蒼白で体を震わせた。
それでも右京蒼士の口は容赦なく開く。
「マリエがどこで原田さんと繋がったのか知らないが、原田さんが離婚話や自宅を知っているのは、マリエがリークしているってことだ」
「ア、アタシは……だって……」
椿マリエは両手を口に当てて、今にも泣きそうだ。
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