俺と、甘いキスを。
「マリエのデザイン事務所は三年前から経営状況が悪化していたわ。借金も膨らんで倒産寸前だった。それなのに、高い会場料を払って派手なライブを繰り返したため、収入が追いついていないのに支出ばかりが増えていたわ」
そう説明するのは三条美月だ。その経理に関する書類の束を、テーブルにトンッと置いた。
その書類を、右京誠司が手に取って目を通す。
「これは、酷い。マリエちゃん、こうなる前に日本に戻って来れなかったのかい?」
と、困り顔でマリエを見下ろす。
マリエは「だって、だって」を繰り返すばかりだ。
右京蒼士は半泣きな椿マリエを慰めるどころか、腕組みをして呆れたため息を吐いた。
「マリエは会社がどうなろうと、社員がどうなろうと、自分のステータスとライフスタイルは絶対変えない女だ。一度ちゃんと話し合うべきだと思ったが、マリエの男遊びや毎年自宅に届く、うんざりする程の男からのクリスマスカードを見ると、マリエに口出すことをやめてしまっていた」
それを聞いた彼女はとうとう泣き始めてしまった。ポロポロと涙を流し蒼士に慰めて欲しそうに見つめ上げているが、彼も、周りのみんなも「自業自得だ」と覚めた視線を送るばかりだった。
「マリエと原田さんは海外のどこかのイベントで出会ったんだと思う。マリエも柴本貴臣の母親と同様に「困っている人を助ける」という名目で原田家から融資を受けていたんだろうな」
と、右京蒼士は低い声で椿マリエへ目を細める。
彼女はまたもや「だって」と言ってはしゃくりあげてハンカチを手にして「京華さんと初めて会ったのは」と、話し始めた。