俺と、甘いキスを。

「京華さんと初めて会ったのは、ラスベガスのイベントのときだった。「困っていたら相談に乗るから」と言われて嬉しかったの。その後すぐに経営が傾いて、京華さんに連絡したらすぐにお金を貸してくれて助けてくれたの。それで京華さんにはお金以外でも相談することが増えて、蒼士から離婚を切り出されたことも話したわ」
「蒼士に「五千万を貸してほしい」と言わせるように、と原田さんに言われたのね?」
右京蒼士の隣にいた三条美月に聞かれて、椿マリエはこくりと頷いた。

「だって、京華さんがこの計画が上手くいったらアタシの事務所に貸した三億をなかったことにしてあげるって言われて……」

「三億っ?!」

普段聞かない億単位の金額に、その場にいたみんなが口を揃えて驚きの声をあげた。
ふっと、原田京華を見ると、いつの間にか彼女の横に兄がピッタリと椅子を寄せて座っていた。
「コイツ、泣いている女が話している最中に逃げ出そうとしたぞ」
と、眉を寄せて言う兄。原田京華は「お手洗いに行こうとしただけよっ」と言い訳していたが、兄の睨む顔を見て萎縮していた。

右京蒼士は美しい顔に冷笑を浮かべる。
「へぇ。俺の原田さんに対する愛が三億で帳消しにできるのか。なるほど、でも俺はマリエに五千万は払わない。離婚は弁護士と相談して相応の慰謝料を払って成立することにする。よって、俺は原田京華と関係を持つことはない」
「蒼士っ」
「右京さんっ」
椿マリエと原田京華が同時に立ち上がる。泣き顔の椿マリエと違い、原田京華の顔には怒りが滲んでいる。
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