俺と、甘いキスを。
「右京さん。マリエさんの借用書にあなたのサインと捺印があると言ったら?」
「俺はそんな書類を見たことがない。もしあるのなら筆跡鑑定をして実印も俺のものか確認すればいい」
「右京さん、これだけは信じて。確かに祖父は鳳一族との強いパイプを欲しがっていたわ。でもそれを抜きにして、私はあなたが本当に好きなの。マリエさんがあなたの妻だからお金を貸した。そして離婚をすると聞いた時、どんな手を使ってでもあなたが欲しかったのよ」
原田京華は、必死になって声を張り上げる。
「あなたが川畑さんを構うようになって、何故地味で何のメリットもない彼女に近づくのか不思議だった。二人が一緒にいるところを見ると、悔しくて仕方がなかった」
「だから俺と花を離そうと、峰岸さんにありもしない花に不利な情報を流したのか」
右京蒼士の尋問のような問いかけに、原田京華は半ば投げやりな口調で答えていく。
「それは、ほんのちょっと懲らしめようとしただけなのよ。噂なんてすぐに消えるものだし、川畑さんが右京さんから離れてくれたらそれでいいと思ったのよ」
二人の険悪な空気に、周りは息を飲んで成り行きを見守っている。少しずつ本性の見えてきた原田京華の姿に、私の気持ちは複雑さを増すばかりだ。
「花を押して弁当をダメにしたのも、見せつけるように抱きついてきたのも、花に対しての脅しだろ?峰岸さんを使って俺たちを探させ、彼女の気持ちを逆手にとって怒りを花に向けさせたのも、全部アンタの計算だったんだろ?」
「川畑さんが右京さんから離れなかったからよっ!」
「違うっ!俺が花から離れなかったんだっ!」
大声を上げる彼に、私はビクッと驚く。