俺と、甘いキスを。


研究室のドアから外へ一歩出た時だった。
「川畑さん?」
声をかけられ、別に悪いことをしているわけでもないのに、ビクリと体が震えた。
研究所の受付嬢、峰岸真里奈が立っていた。
「峰岸さん、お疲れ様です」
平静を保って挨拶をする。
真里奈の方が遥かに年下なのに、彼女は挨拶も忘れて私を見つめる。

「右京さんの研究室に、入ったんですか」

驚いているような、疑っているような、どこか納得していない表情をしている。

『ガードに登録されている人物は、たったの五人だ』

その五人の中に、真里奈は含まれていないのだろうか。
「それは…」
研究室から出たところを彼女に見られたのだから、誤魔化す余地はない。
すると彼女は「そうか!」と、明るい顔になっていく。
「あの入口にいる変なロボットはいなくなったのね。私のことを不審者扱いした、気に入らないロボットだったのよ」
そう言って、私と入れ違いに研究室の中へ一歩踏み入れた。

「フシンシャ!フシンシャ!」
途端にガードが騒ぎ出し、大きな電子音をビービーと何度も鳴らした。
真里奈は「きゃっ」と、声を上げた。
「やっぱりロボットがいるじゃないっ」
と、怒りながら受付嬢は外へ飛び出した。振り向いて円柱型の金属を睨みながら、
「川畑さんもどうせ追い返されたんでしょ」
と、聞かれた。
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