俺と、甘いキスを。
毎日、内線電話が鳴る。
内線番号45。
あの翌日から一日一度は必ずかかってくる、右京研究室からの内線。電話が「内線だよー」と知らせているのに、私は席を立つ。そして戻ってくると、
〝折り返し右京研究室へ内線してください 梶田〟
と、今日は三度目のメモが置かれている。
ちなみが資料のホチキス止めをしながら、
「花さん、右京さんにまだ連絡してないんですか。急用かもしれませんよ」
と言われてしまう。
「電話は三コール以内にでるように」なんて、新入社員に指導しているのは自分なのに。
右京蒼士は、多分本当に仕事で内線をかけているのだろう。今の私はその内線さえ、受ける勇気がなかった。
あの日から昼食は二階のミーティングルームでなく、五階の資料管理室で食べるようになった。
スチールの書類棚がズラリと並んだ、少々埃っぽい場所だが日中に人が来ることはほとんどない。この部屋には古い事務机とパイプ椅子があるから、簡単に拭いて使っている。それに窓も開くので換気もできる。
私は右京蒼士から逃げるように、ここで昼食を食べている。二階のミーティングルームや休憩スペースにいたら、彼に見つかると思ったからだ。