俺と、甘いキスを。
私にとっては願ったり叶ったりの文句のない条件だ。しかし、それは右京蒼士にとって本当にいいのだろうか。
嫁の実家に家を建てて住むのだ。気を遣ったりしないだろうか。
「右京さん。私にとっては良いお話ですが、右京さんは……」
「大丈夫。お互いストレスにならない設計にしようと思っているし、そこは桐谷ハウジングに知り合いがいるから相談に乗ってもらおうと思っている。俺だって花と二人で過ごしたいときがある」
そう言って、テーブルにマグカップを置くと、私を後ろから両腕で抱きしめた。右の首筋に埋める彼の顔が、少し熱い気がした。
私は今、すごく貪欲だ。この腕を離したくないと思っている。
きっと右京蒼士の気持ち以上に。
「私、右京さんに話したいことがあるんです」
「うん」
「今日のお見合いの騒ぎと離婚のこと、あれは私のためだったんですよね?」
この質問に、彼は首筋から顔を上げた。
「半分正解、半分はずれ」
「半分、はずれ?」
「ああ」
右京蒼士は私の座るワークチェアをクルリと向きを変えて向き合った。
「好きでもない相手と結婚がチラついている見合いを、乗り気でない花を何とかしようと思っていた。相手が何の問題のない男なら、俺は花に無理を言って不倫という関係を続けてたかもしれない。柴本課長はそうじゃなかったから、兄貴に協力してもらって花の両親の前で破談になるように仕組んだんだ。あんな奴に花を汚されたくないと思った、俺のワガママだ」