俺と、甘いキスを。

「俺は兄貴と違ってただの研究所の研究員だから、給料は他の研究員と差はないと思う。月に二、三回は兄貴に呼ばれて本社の役員会議に顔を出すが、本社での俺の仕事は重要じゃない。万が一、花に苦労をかけるかもしれないが、俺と一緒にいてほしい」

「そ、それは……プ、プロポーズ、ですか」

そう聞くと、右京蒼士は顔を赤くしながらもムスッと口をへの字に曲げて私を睨んだ。

「プロポーズって言葉で片付けられるほど、俺は軽くない。十年と、これからの一生の重みだ。花、受け止めてくれ」
「えっ、ちょっと、きゃっ!」
そんな強引なセリフと共に、私は抱き上げられてしまう。

ドアを開け、部屋のベッドに寝かされて組み敷かれる。
「花、今日からお前は、俺の本物の恋人だ」
「本物の恋人」と言われて、嬉しくなって視界が滲んでしまう。もう「不倫」という言葉に怯えなくてもいいのだ。
本当に、どこまで私に優しい男なんだろう。

「どうした、嫌か?」
「違うの……嬉しいの」
泣きながら笑う私を、彼はきっと変だと思うだろう。零れる涙を指でくいっと拭う彼に、どんどん惹かれていく。

「花のその顔、好きだ」
そう言って、ふわりとキスをしてくれる。

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