俺と、甘いキスを。

奥の部屋に押し込まれ、「ドンッ」と背中を壁に叩きつけられた。
「っつ!」
背中の痛みを感じる間もなく、右京蒼士の両手は私の顔の両側に置かれる。
挟み込まれ、真正面から見据えられた切れ長の瞳は、今にも獲物に噛みつきそうなくらい鋭い。

「何故、避ける?」
「別に避けてなんて…」

近づいてくる右京蒼士の顔を逸らそうと、私は首の筋がおかしくなりそうなくらい、必死に顔を横に捻る。

「避けてるじゃねぇか」

事務所で話していた時と、ガラリと変わった野蛮な口調。
そして、耳にかかる、彼の息。
「……っ」
私の全身がビクリと震えたことに、右京蒼士の顔がスッと離れていく。
「…別に怒っているわけじゃねぇ。怖がらせるつもりもない」
と言い、私を囲む両手も離れていった。その手で、彼は髪をくしゃりと掻きあげる。

彼の体が離れたことで、私の全身の力が抜けていく。背けた顔もゆっくりと前に向き、どこか苛立った彼を見た。困っているようにも見える。

右京蒼士はクルリと自分の研究室を見回した。
「見てわかると思うが、今、俺は一人でここで仕事をしている。本当に仕事だけしているせいで、書類の片付けやその他雑用が後回しになっている状態だ」
そう言われてから、私も改めて部屋を見渡す。

先日伺った時には気づかなかったが、なるほど。
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