俺と、甘いキスを。
お昼休みは空いているミーティングルームで過ごし、事務所に戻り午後の業務が始まる頃。
ちなみも席に戻ってきた。
「花さん、さっき食堂で聞いたんですが」
と、席に座るや否や、少し腰を浮かせて話しかけてきた。首を傾げる私に、彼女は「柏原研究室は大騒ぎしています」と言う。
ちなみが言うには、全国で名の知れた大手ハウスメーカー、桐谷ハウジングの総合受付に導入した最新型AIドール「ミライ」が不具合を起こした、という連絡があったらしい。
AIドールというのは人工知能が搭載された人型ロボットで、この研究所でプロジェクトチームが組まれて開発されたものだ。「ミライ」は桐谷ハウジングに三年前に導入され、メイクを施した美人なAIドールは一時世間の注目を浴びた。
桐谷ハウジングと契約したのはオオトリグループのオオトリ産業システムだ。そちらでデータの管理や構築、メンテナンスを請け負っている。
「AIドールの不具合は先週からあって、オオトリ産業システムの担当者が何度かメンテナンスを行ったんだけど、直ったと思えば別の不具合が発見されての繰り返しだから一度全データをチェックするためにAIドールをこちらに運ぶらしいです」
彼女はひと通りの説明が終わると、席に座り直した。
なるほど、そういうことならAIに携わっている柏原研究室がメインとなり、「ミライ」開発に参加した研究者も加わることになるだろう。
──もしかしたら、右京さんも参加するかもしれない。
彼はまた、あの研究室で寝泊まりするのだろうか。