俺と、甘いキスを。
翌日の朝、私は始業時刻ギリギリに出社して、明日から金曜日までの三日間の有給休暇届けを事務長に提出した。
入社して今日まで有給休暇なんて使ったことがない私に、事務長は目を丸くした。
「先日、事務長が有給休暇を使うように、と仰っていましたので。ちょうど家の用事もありますので許可をお願いします」
事務長は白髪混じりの頭をくいっと傾げて、眼鏡の四角いフレームを指で上げる。その表情は少し困った顔をしていた。
「昨日、川畑さんが帰った後に右京くんから「ミライ」のデータプログラムの修正で手が離せないから川畑さんに事務サポートを頼みたい、と言われたんだ。まあ、いろいろあったから僕としては他の人でもいいんじゃ…」
「じゃあ、他の人に頼んでください。私は右京さんの部下じゃありませんので」
私は事務長の声を跳ね返して、言葉に少しトゲがあったかもしれないが自分の言い分を主張させてもらった。
「…ケンカ、でもしたのか?」
ボソッと控えめに聞く事務長はチラリと私の顔を伺って、届書に目を通して捺印をした。
彼の気遣いに少し触れた気がして、気遅れしてしまう。
「いいえ。私が、至らなかっただけです」