俺と、甘いキスを。
きっと内線がかかってくる。
すぐに自分のデスクの電話の配線を抜く。そしてちなみの隣の空きデスクにある電話を引き寄せた。内線を受けることはできないが、外線電話は対応できる。
「花さん、どうしたんですか」
と、電話を動かしている私を見て、ちなみは首を傾げた。
私は彼女に「申し訳ない」と両手を合わせた。
「突然だけど、明日から三日間の有休をとったの。迷惑をかけるけどよろしくね」
「それはいいですけど、有休と電話線を抜くのとなんの関係があるんですか」
「えへへ…それはちょっと…」
私は下手な作り笑いをした。
とにかく、今日は右京蒼士から回避することを念頭に置いて仕事をする。今までの経験から、お昼休みの前と終業時刻前に現れる可能性が高い。今のうちに備品保管庫で調べるものをまとめて、お昼休みのチャイムが鳴るまで備品保管庫で仕事をすることにした。
予感は見事に的中した。
ちなみは私が備品保管庫にいる間に、右京蒼士が事務所に来たことを教えてくれた。
「右京さん、ひどく疲れた顔をしてましたよ」
「そ、そうなんだ…」
と、返事はしたものの、食事や睡眠の不規則さを心配してしまう。ハッと気がついて、頭をブンブンふる。
──悪いのは、私ではない。
右京蒼士から離れる、いい機会じゃないか。今度こそ彼への想いを断ち切って、柴本さんとのお見合いに挑まなくては。