雪の訪問者
彼女は、その一ヶ月前から、病床で生死の境を彷徨っていたはずだ

そう、手首を切って…

偶然を装い、僕に会いに来てくれた頃だ

その後も、何回か、彼女は訪れた

いつも、吹雪を引き連れて

でも、僕に会いに来てくれた彼女は、決して骨と皮だけの無惨な姿ではなかった

少し影があるにせよ、明るく、健康的な印象だった

そうなのか…

彼女は、自らの想いを僕に伝えるべく

高校時代の、若々しい印象を身にまとい

その意識だけを超越させて、病床から

最後の力を振り絞って、僕に、会いに来てくれたのか

…そうかも、しれない

「…岩田くん、あんた、大丈夫か?」

情報通の彼女が、気遣って、小声で尋ねてくる

後ろで、子供の走り回る声が聞こえる

彼女も、察しているのか

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