雪の訪問者
僕は彼女に礼を言って、電話を切る

体の震えは、もう治まっている

その代わりに、僕は…

彼女が、僕に伝えたかった想いについて、考えてみる

考えれば考えるほど…

心の奥底から、やるせない思いが

静かな森の奥の、こんこんと湧き出でる泉のように、染み出してくる

途切れることのない、無力な思いだ

彼女は…あの大通りの向こうから、僕に叫んで、想いを伝えて

それで、満足したのだろうか

旅立って、行けたのだろうか

僕は…彼女の想いに、答えることが、できたのだろうか

やがて春を迎え、街には、重いコートを脱ぎ去った人々が行き交うようになった

あれ以来、街が吹雪に覆われることはなかった

僕は、その吹雪を、密かに心待ちにしていたのだけど

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