俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~
「オラんとこは村長に馬を借りてるし、この前は農具を修理してもらったからな。断れねぇべ。アリスを嫁にやったら、馬貸しの取り分を五分にしてやると言われてな。悪くねぇ話だ」

(なによそれ、まるで身売りじゃない。大事な娘だと言ってたのは、嘘だったの?)

「お母さん!」

助けを求めて振り向いたら、母親がエプロンで手を拭きながら近づいてきた。

アリスの横に並んで腰に手を当てると、父親に意見してくれる。

「あたしゃ反対だよ。あんな豚男の妻だなんて、アリスが可哀想だ」

頼もしい味方ができたと喜びかけたアリスだが、母親にまで現金なことを言われてしまう。

「あんた、馬貸しの収益、全部うちのもんにしてくれるなら考えてもいいって言ってやんな。うちの娘は村一番の美女だと言われてるんだよ? それくらいじゃないと、嫁にやれないね」

「お母さん……」

ショックを受けたアリスが固まっていると、畑仕事を終えた兄と、馬番の弟たちが揃って帰宅した。

異変を察して「どうした?」と問う兄弟に、母親が事情を話せば、アリスの気持ちなどお構いなしに喜ばれる。

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