松菱くんのご執心
そんな穏やかな時間を切り裂くように、バタバタと駆け上がってくる靴音と共に、
屋上の扉が大きく開いた。
晴天の空には似合わない鬼気迫る音に、わたしは驚きで縮みあがった。空になったお弁当箱が跳ねる。
「みかさっ!」
息を切らして現れたのは、幼なじみの「早瀬 爽」だった。
「び、びっくりした、どうしたの爽。そんなに焦って」
わたしはお弁当の蓋をそっと閉めた。
「どうしたのって、みかさが松菱に連れていかれたって聞いたから、心配したんだよ」
「心配したって………わたしは松菱くんとご飯食べてただけだよ」
ね? と松菱くんに確認を取るが、彼は小さく肩をすくめるだけだった。