愛溺〜番外編集〜
好きな女を前に、我慢しろという方がおかしい。
今までも様々な場面で我慢してきたのを思い出す。
いくら慣れているとはいえ、純白な愛佳に対して容易に手は出せない。
何もかも俺が初めてなのだ、丁寧に扱わないと。
ゆっくりと染め上げていけばいい。
そのように考えていても、時に試練が舞い降りてくるのだから神という存在を恨みたい。
怒りの矛先をそこに向けるしかなかった。
「涼介…」
「…っ!?」
全身が熱を帯びているのか、体中熱い愛佳が俺にそっと抱きついてきた。
本当に困る。
普段の素直じゃない彼女の方が、我慢するのに適している。
「愛佳、とりあえず落ち着こうか。
ほら、食べないと風邪が治らないよ」
「……嫌なの?」
「えっ?」
「私のそばにいるのが嫌…?」
涙目、上目遣い。
すぐそばに愛佳がいるというのに、キスすらできない状況がもどかしい。
いや、移る覚悟でキスしてしまおうか。
けれど今は愛佳の体調が優先だ。
「嫌じゃないよ。早く愛佳に治して欲しくて、少しでも力になりたいと思ったんだ」
「……本当?」
「本当だよ。だから少しでも食べてくれたら嬉しい」
「うん、食べる」
俺はいつになったら愛佳を食べられるのだろう。
なんて、今はそのようなことを考えている暇はない。
気持ちだけ焦っても、彼女を傷つける結果にしかならないのだ。