悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

 アリスはスカーフを口元に巻き、マスク代わりにする。先に召喚しておいた医療用手袋をはめ、隊員たちを順番に向かいの椅子に座らせた。

「ええ、その身長でこの体重? ちょっと太りすぎよ。あなたはダイエットが必要ね。他に気になるところはなし、と。はい次」

 アリスは亜里が小学生の頃にあった内科検診を思い出した。

 BMI値と皮膚の湿疹や乾燥、口の中のできもの、目の黄変などをざっと見て、ルークに記録させる。

(私は医者じゃないから、できることは限られる。でも医者がいないからこそ、自由にできることもある)

 亜里の看護師時代は、医師の指示が全てだった。

 看護師から見てどんなに患者の体調が悪くとも、医師の指示がなければ血液検査すら勝手にしてはいけないのだ。

 逆に、「これして意味あるの?」という治療でも医師の指示があれば、従順に行わなくてはならない。

「げっ。あなた、このできもの。もしかして下半身にもあるんじゃない?」

 アリスはある隊員の口唇に、大きなできものができているのを発見した。

「はい、大事なところに……見ますか?」

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