悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
駆け寄って挨拶をしてきたアリスに驚き、奥さんたちは慌ててお辞儀した。
まさかこんなところで王子の妃が一緒に洗濯しているとは思わなかったのだろう。
特に宣伝もしなかったので、地元の奥さんたちもルークが結婚したことを知らなかったのだ。
「こっちはダメよ。汚い水が流れてくるから。川上で洗濯してね。ねえみんなー、全員でもっと川下に移動してー」
「あいよー!」
男たちはぞろぞろと川の中を歩いて移動する。
奥さんたちはぺこぺことお辞儀し、空いた場所で洗濯を開始した。
「あなたたちもお城で集団生活じゃなくて、外に所帯を持って通勤してくればいいのに」
じとっと男たちをにらんだアリス。
城にいる者の数が減れば減るほど、アリスの仕事は少なくて済む。
「それを言うなよう。俺たちモテないんだよう」
そうでしょうね。と思ったけど、ため息だけで返した。
「とにかく、毎日水浴びをしなさいよ。男は清潔が一番だから」
亜里の世界とは違い、風呂という習慣が一般的ではない。
一応ルークの浴槽はあるものの、明らかにひとり用の上、暖炉で沸かしたお湯を張って使うので、大人数には向かない。