悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
「俺はあなたに、昔のような立派な武人になってもらいたい。どうかアリスの検診を受けてください」
「黙れ。断固拒否する!」
怯まないルークに、ジョシュアの方から背を向けた。
ドスドスと床を踏み鳴らして去っていく一行。
(ルーク、勝っちゃった。いつの間に言い返せるようになったんだろう)
ちらりと横顔をのぞくと、ルークの目元は自分が悪口を言われたときよりも悔しさを滲ませていた。
「ごめん。彼を孤立させる気はないんだ。みんなは、うまいこと仲良くやってくれ」
「隊長……」
戸惑う隊員たちを残し、ルークは城の外に出る。アリスは後を追った。
「ルーク、大丈夫?」
「ああ。ちょっと言い過ぎたかな」
しょぼんとするルークの手を、アリスは握った。するとルークが、ぽつぽつと語り出した。
「あの人は昔、魔法が使えなくてもすごかったんだ。どんな王族も、剣では決して彼に勝てなかった」
「そうなの?」
「だから、父上に疎まれたんだ。クーデターを起こされないように、辺境の地に飛ばされた。結婚していた人とも離縁させられ、あんな風になってしまった」